開発の最後に完成した「愛のテーマ」
─ 酒井省吾さんの音楽が素晴らしいですね
糸井 いいでしょう!
─ ホントにいいです!
糸井 僕ね、酒井君のセコンドみたいな気持ちだったんです。つまり、酒井君は『2』までの音楽を担当した慶一君たち(注1)と戦うんじゃなくて、慶一君のファンと戦わなきゃならなかったんですよ。
─ 『1』と『2』の曲も素晴らしかったですからね。
糸井 もはや、神格化されてますから。もう、すばらしいすばらしいっていう碑が出来ちゃってるわけですよね。「MOTHER音楽の碑」みたいな。
─ はい(笑)。
糸井 だから、その碑みたいなものに、みんなで墓参りに行くようなもんなんですよ。そういう神格化されてるものに対して生きてて戦うっていうのは、もうえらく大変なことで。そういった戦いを酒井君は独りでやんなきゃならなかったんです。
↑『スマブラDX』『カービィーのエアライド』も担当されています。着ているTシャツに注目
─ 『3』のサウンドは酒井さん1人で担当したんですね。
糸井 そうです。それから、注文がもうめちゃくちゃに多いわけですよ。曲数を見ればわかる通り。
─ サウンドプレイヤーには250曲も入ってますよね。
糸井 そういったことを考えたら、開発チームの内部にいて、ゲームのことを一番よくわかってる人に音楽を担当してもらわないといけなかったんです。そのことが開発前からわかっていたから、外部のミュージシャンである慶一君のような人に、注文をいちいち伝達して作曲してもらうわけにはいかなかった。たなかひろかっちゃんも、クリーチャーズの社長になっちゃったし。
─ 「ポケモン」の作曲でも忙しいでしょうしね。
糸井 そう。開発現場で、エンピツけずりをするようなことまで含む仕事ができないと、今回の音楽はつくれなかったんです。それに、『MOTHER3』のストーリーについても、酒井省吾がいちばんよく知ってるんです。「あそこの場面なんですけど、僕はこう思うんですよね〜」とか、シナリオを書いた人間に言ってくるわけです(笑)。
─ 今回『1』『2』の時代のサウンドのイメージも、しっかり残っていますよね。
糸井 残ってます。大変ですよ、あの仕事。好きさと教養、両方が必要になりますからね。あと技術もね。やっぱり柱になったのは、酒井君です。酒井君がいなかったら『MOTHER3』はつくれなかっただろうな〜。
─ 僕らファンとしても本当に感謝です。その酒井さんの曲で、糸井さんのお気に入りは?
糸井 そういう質問って、ほんと困っちゃうんだけど…。みんないいですよね?
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─ クリア後に「愛のテーマ」を聴くと泣けちゃいますよね。
糸井 あの曲は…実は後で特別につくった歌なんです。正直に言っちゃうと、途中まであの歌はなかったんです。エンディングができてなかったときに、このままだと、(ブタマスク登場の場面で流れる曲を口ずさみながら)「♪ダタンタンターン、ダタンタンターン」っていうのがテーマ曲になるぞ、という話になりまして…。でも、当時の僕にとっては、あれをテーマ曲につかってもいいと思うくらい裏番を狙ってたんです。
─ そうだったんですか。
糸井 でも、ものすごく重要なシーンで、僕らがいちばん伝えたいところでかかるような曲が必要だなということで、新たにつくってもらうことになったんですよ。
─ それはいつ頃の時期の話なんですか?
糸井 去年の12月です。ほぼ日(注3)で「もうすぐ出ますよ〜」って言ってたときに、まだあの歌はなかったんです。でも、「愛のテーマ」にあわせて、シナリオの変更に近いようなこともしたんです。
─ 酒井さんも短期間ですばらしい曲をつくりましたね。
糸井 酒井君は、注文をつけられるのをとにかく待ってるんです。「いやぁ、難しいですね〜」と口では言いながら、顔はニコニコしてるんです。それですぐに曲をつくってきて、「どうですか〜?」って(笑)。
広報 1本指でピアノが弾けるようなメロディにしてくださいって頼んでましたよね。
糸井 うん。小学校の教科書に「Eight Melodies」(注4)が載っていて、「♪ポ〜ポ〜ポ〜ポポ〜の縦笛のメロディが学校から聞こえてきました」というメールを読んだことあるんです。それで、今度は音楽室で、ピアノが弾けないような子が1本指で弾いているようなシーンを想像して…。誰でも口ずさめるようなそんな曲が欲しいよねっていうことで酒井君にお願いしたんだけど、すばらしい曲ができて、すごくうれしかったですね。
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注3:ほぼ日
ほぼ日刊イトイ新聞のこと。糸井さんが主宰するウェブサイトで「ゴキゲンを創造する、中くらいのメディア。」がキャッチフレーズ。 www.1101.com
注4:Eight Melodies
Eight Melodies/『MOTHER』の冒険で、重要な役割をはたす8つのメロディー。
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