手塚さんが任天堂に入社したのは1984年のこと。ファミコンはその前年の7月15日に発売されているから、ほぼ家庭用ゲーム機の歴史とともに歩んできたクリエイターと言っていいだろう。
 そんな手塚さんに「最も影響を受けた人は誰ですか?」と質問したことがある。もちろん「宮本茂」という答えを期待してのことだ。手塚さんは宮本さんより8歳年下なので、影響を受ける年齢差としてはちょうどいい感じだし、しかも誕生日は1日違いの蠍座だし(関係ないですか?)。ところが、返ってきた答えはまったく予想をしないものだった。
「奥さん…かな?」。それを聞いた瞬間、僕の頭の中は真っ白になってしまった。手塚さんはさらに言葉を続ける。「彼女を通じて、女性という存在をより深く知ることができました。異性という異なる文化を取り入れることで、自分自身がレベルアップしたような気がします」
 こんなセリフ、フツーは恥ずかしくて言えない。でも、手塚さんは照れもせず、真顔で言うのだ。しかも、ほのぼのとした口調だから、まったく嫌みに聞こえない。ただ、どうして影響を受けたのが宮本さんではなく、奥さんなのか、疑問が残ったのも事実。
 そこで今回のインタビューの終わりに、そのことについて聞いてみた。手塚さんは「イラスト関係では大学の先生、ゲーム作りにおいては宮本から影響を受けました」と前置きしつつ、「僕は男だけの2人兄弟で育ち、家にいる女性は母親だけだったんですよ。だから、結婚してより女性の考え方がわかるようになったんです。やっぱり一緒に暮らすことが大きいですよね」とおっしゃるのだ。
 結婚すると、自分の価値観を相手に押しつけようとして、夫婦ゲンカになることも少なくない。でも手塚さんは、自然体で生きてる人。奥さんの意見をさりげに聞くことで、自分のレベルアップにつなげてるようなのだ。
 これから結婚しようとしている読者の皆さん、ぜひ参考にしてくださいね。
(サオヘン)
―fin―

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