自由にセーブができない理由
─ 最初は、どこでもセーブできないということで、シビアに感じた人も多かったと思うんです。どうして、自由にセーブができないようにしたんですか?
手塚 初代の『スーパーマリオ』には、バックアップ機能がなかったので、セーブするという考え方自体がなくって、同じコースを何度も何度も楽しむという作りになっていましたよね。なので、どこでもセーブができて、好きなところから遊べるようにすると、「緊張感のない遊び方になるやろな」と思ったわけです。もちろんそれには一長一短があるんですけど、「できたらここまで頑張ろう」という自分の中で目標を持って、少しずつ自分がうまくなるというのを実感してほしいということで、あえて自由にセーブができない仕様にしたんです。
─ セーブができないということで、プレイしていても戦略をいろいろ考えるようになりますよね。
手塚 ええ、そのようにして遊んでほしかったんです。遊びって、基本的には自分の中で戦略をたてるのが大事で、それがうまくいったらうれしいし、うまくいかなかったら悔しいし。だからこそ、また次に挑戦するという繰り返しだと思うんで、そのようなことができるような土壌を『Newマリオ』に作りたかったんですね。
─ その意味で、スターコインの使い方が重要になるわけですね。
手塚 スターコインに関しては、いろんな方がいて、どんどん使っちゃう人もいれば、もったいなくて使わない人もいて、それがおもしろいんですけどね。今回の『Newマリオ』は、人によって攻略の仕方がいろいろあるのも、おもしろさのひとつになってるんじゃないかと思います。
メッセージの表示はなるべく少なく
─ コースが1本道でないのも、いろんな遊び方ができるようにするためなんですね。
手塚 実は開発の途中では、1本道だったんです。1ワールドから8ワールドまで、直線でつながっていたんです。でも、そのようにしてしまうと、最後まで行くのに長すぎるからということで、真ん中に分岐をつけて、全部のコースを遊ばなくてもクリアできるようにしようと。その代わり、サブ的に行けるようになる4と7のワールドは、難易度はちょっと高めにしたんですけど、結果的にはそうしてよかったかなと思っています。
─ その4と7のワールドなんですが、行き方がわからないということで、そのために攻略本を買ってくださった人もいたんですよ(笑)。
手塚 なるほど(笑)。でも、それらしいヒントは取説に書いたりしてるんですけどね。それにマップにも点線で表示したりして、ワールドクリアのときにも「ちっちゃくなって行くのかなあ」ってわかるようにしたつもりなんですけど。
─ でも、取説に「マメマリオであるボスを倒すと…」とだけ書いてあっても、それで4と7のワールドに行けるなんて、なかなか気づかないと思いますよ(笑)。
手塚 わかってくれるといいかなって(笑)。でも、そのあたりは、直接的にわかるようにするよりも、ちょっとにおわすような感じに仕上げたかったのはあるんです。
─ 実際、気がついた人が友達に教えたりするようなこともありますしね。
手塚 そういったコミュニケーションも大事ですよね。だから、このゲームでは、いろんなヒントに関して、メッセージはなるべく使わないようにしようと。文章を読むというのは、お客さんによって好き嫌いがありますし、何よりテンポが悪くなりますよね。だから、なるべくメッセージなしで遊べるようにしたかったんです。「こうしたら、こうなるよ」っていうような説明がなくても遊べるようにということを大事にしたんです。『ゼルダ』だとそんなふうにはいかないですけど、『マリオ』ならできるかなと思ったんですね。
マップ
↑点線になっているワールド4と7に行くためには、2と5のボス戦をそれぞれマメマリオでクリアすればオッケー
メインの曲は近藤浩治さんが作曲
─ 『マリオ』も進化して、グラフィックがすごく柔らかくなった印象です。
手塚 グラフィックを決めることに関しても、結構時間がかかってるんです。最初は、いろんなサンプルを作って、『マリオ』にしてはちょっとリアルすぎるなあとか、いろんな意見を聞きながら、最終的にあのようなグラフィックにしたんです。皆さんが見ている最終版に行き着くまでには、想像されている以上にたっぷり時間をかけているんですよ。
─ BGMに合わせてクリボーたちが動くのもうれしいですよね。
手塚 うれしいですか? そう言ってもらえると、ホントにうれしいです(笑)。
─ あれは手塚さんのアイデアだったんですか?
手塚 ええ。あのように、BGMに合わせた動きをさせたいなあとずっと思っていて、サウンドの方にムリを言って入れてもらったんです。だから、個人的にはお気に入りなんです。
─ BGMは、ピクニックに行くようなウキウキした感じですよね。
手塚 BGMに関して、ほとんどの曲は太田という若い女性が作曲してくれましたが、近藤にも曲を作ってもらったんですよ。太田は全曲作る気満々だったんですが、『マリオ』の曲なので、やっぱり近藤にお願いしようと。「2曲だけでも作ってよ」ということで依頼したんです。
─ 最初のステージの曲ですか?
手塚 ええ。あの曲で、クリボーが飛び跳ねる「♪ワッ! ワッ!」というところは、近藤が「普通の効果音よりは、声を入れよう」ということで作ったんです。でも、制作が最も忙しい時期の仕様変更だったので、「遊びにくくなった」というネガティブな意見もあったんですけど、楽しそうだからええやんということで、ムリを言って採用してもらいました。
近藤浩治さん
↑『マリオ』や『ゼルダ』などの名曲の数々を生んできた近藤浩治さん

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