『マリオ64DS』の資産を使って効率よく制作
─ ユーザーの立場から言うと、ファミコンミニの『スーパーマリオ』が出て、それで『マリオ』の楽しさを思い出して、その2年後に『Newマリオ』が出るという、とてもいい流れになっていたと思うんですけど、これって、狙っていたんですか?
手塚 狙ったわけじゃないですね。ひょっとしたら、『Newマリオ』はもっと早く出来てたかもしれませんし。
─ というと?
手塚 足助は途中で『キャッチ!タッチ!ヨッシー!』にかかわったんです。DSが発売されて、やっぱりその性能をうまく生かしたアクションゲームをなるべく早く出したいということで、王道の『マリオ』というよりは、タッチペンをうまく使ったアクションゲームを作ろうと。そのときは『Newマリオ』はやりかけだったんですけど、先に『キャッチ!タッチ!ヨッシー!』の企画を進めることにしたんです。
─ ヨッシー』が『マリオ』を追い抜いちゃったと(笑)。
手塚 ええ(笑)。でも、『ヨッシー』などで、DSのお客さんが増えたおかげで『Newマリオ』をより多くの人に楽しんでもらうことができたわけですね。
─ 企画自体はどのくらい前からあったんですか?
手塚 しばらく考え込んで )えーっと、どのくらい前やったやろ? …そうや思い出した(笑)。もともと『Newマリオ』は、比較的少人数で作っていたんです。で、『マリオ64DS』を作っているときから構想はあって、そのときの3Dモデルをうまく使えると、『Newマリオ』の制作も楽かなと。あ、「楽かな」という言い方はよくないし、正確じゃないですね。効率よく作れるということですね(笑)。ですから、『Newマリオ』のことを意識しながら『マリオ64DS』を作って、その素材をもらってというような作り方をしました。
─ 『マリオ64DS』が発売されたのは2004年12月ですから、その前から構想があったわけですね。
手塚 ええ。横スクロールの『マリオ』を作ろうということになっていて、グラフィックは2Dではなくって、3Dを使おうと。DSの能力はそれくらいやっても大丈夫ですから、『マリオ64DS』の資産をうまく使って、効率よく作ってみようというのは、当初から考えていたことなんです。なので、『キャッチ!タッチ!ヨッシー!』の制作をしながら、モデルのデータはすでにあるので、プログラムのほうを同時に進めていたんです。
スーパーマリオ64DS
↑DSと同時発売だった『スーパーマリオ64DS』のマリオ
「マリオ部屋」で進めた開発
─ 少人数ではじめたという話ですけど、取説に載っているスタッフをざっと数えると、およそ80人くらいですね。
手塚 そんなにいました?(笑) 取説にはアートワークの方とかもいますので、メインでずっと制作にかかわった人たちで言うと、たぶん20人くらいだったかなと思います。
─ 結構少人数なんですね。初代の『スーパーマリオ』のときは何人くらいで作ったんですか?
手塚 メインでやったのは、5人とか6人くらいだったと思います。
─ それと比べると大部隊!(笑) 今回は「マリオ部屋」を作って、開発していたとか。
手塚 初代の『スーパーマリオ』のころは、開発環境自体がチープで、紙に地形をマーカーで描いて、それを元に、プログラマーがゲームのデータに落としていたんです。でも、今は地形を作るためのツールを最初に作って、ほとんどの作業はコンピュータ上で行っているわけです。だから、コース作りに関しては、昔に比べるととても楽になってるんですけど、今回はあえて、当時の古い作り方にちょっと近いカタチを取り入れてみたんです。壁一面にマップなどをはって、付せんをあちこちにはって、ここにこのアイテムを持ってこようとか…。そういった作り方をするためには、自分の席に座っていただけじゃできませんから、広い部屋をもらって、そこで作戦会議をしながら、開発を進めていったんです。
─ 付せんをマップの上にペタペタはるという作り方は、『時のオカリナ』の開発のときに聞いたことがあります。
手塚 そうですね。プロジェクトによっては、時々そんな作り方をしてるんですね。デジタルだけではなく、アナログ的な手法を取り入れながら開発を進めたほうが、わかりやすいときがあるんです。一度にたくさんのメンバーに状況を伝えることができますしね。
─ 壁にはられたものをみんなで見ながら、意見を交換しあうわけですね。
手塚 敵も種類をたくさん作ってしまうと、どこで初めて登場するのか、忘れてしまうこともあるわけです。でも、付せんをはっておくと、ここで初めて出てくるわけねって、ひと目でわかるようなメリットもあるんですね。
宮本さんの指示でどこでも巨大化
─ ところで、マリオの生みの親の宮本(茂)さんは、『Newマリオ』に関して、どのようにかかわったんですか?
手塚 宮本にはご意見番のようなカタチでかかわってもらいました。「今、開発はこんな感じなんですけど、どう思いますか?」という感じで。あと、巨大マリオに関しては、大きな意見をもらいましたね。作り手の都合になるんですけど、どこでも巨大マリオを使えるようにするというのは結構大変なんです。
─ いろんな地形がありますからね。
手塚 そこで、開発当初は、巨大化できる場所を限定して考えていたんですけど、それに対して宮本から、「もっと自由度があってもいいじゃないか」という指摘を受けたんです。
─ やっぱり、巨大化できるとなれば、ユーザーとしてはいろんな場所で試してみたくなりますよね。「ここで巨大化したらどうなんの?」っていう遊びの部分ですよね。
手塚 ええ。それで考えを改めて、その部分に関しては再構成しました。
─ その作業って、すごく大変だったんじゃないですか?
手塚 大改造するほどのものではなかったんです。もともとシステム的には、どこでも巨大化できるようにはなってはいたんです。最後にまとめるにあたって、どこでも巨大化できると問題が出てくるわけですけど、内部処理的にはものすごく大きな問題ではなかったんです。
─ でも、デバッグ作業は大変だったんじゃないでしょうか?
手塚 デバッグ作業は少し増えましたけど、当初の予定のサイズを少し変えることで、いろんな場所に対応できることもわかったんですね。
─ 巨大マリオのほかに、コウラマリオも新機軸ですけど、あれはちょっと使いづらいところがありませんか?
手塚 コウラマリオは…あんまり使わない…とも聞きます(笑)。
─ そんなこと、正直に言わないでくださいよ(笑)。コウラマリオを登場させた意図は、どういった点にあったんですか?
手塚 足助としては、新しい要素を入れたいという考えがあって、それでコウラマリオを入れたんですけど、入ってるから使わないといけないとか、必須の要素になってしまうと、ゲームが複雑になってしまうので、できるだけプラスアルファの要素にしたかったんですね。
巨大マリオ
↑巨大マリオでどんどん突き進むのはとても快感。でも、元のサイズに戻ったときに、足場がなくてミスすることも(涙)
コウラマリオ
↑コウラをしょったマリオの姿にちょっぴり哀愁も

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