シンプルになったWii版の操作性
─ ところで、もともと『スーパーペーパーマリオ』は昨年の8月3日にキューブで発売される予定だったわけですね。それがWiiで出ることになったのは、どうしてなんですか?
田邊 ま、これは記事にできないと思います。現場にとってもビックリやったし、急なことやったとだけ言うときましょうか。川出 でも、結果的にはWiiになってよかったと思っています。
上田 クオリティが間違いなく上がりましたしね。
─ キューブからWiiになって、どんなところが変わったんですか?
川出 アンナのWiiリモコンのポインターを使ってのサーチは、Wiiになってから入れました。キューブのときは、マリオとかが怪しい場所に近づいて、ヘルプボタンを押すとヘルプのメッセージが出たりするようになっていたんです。でも、Wiiリモコンのボタンの数はキューブよりも少ないでしょう。それで、ヘルプ用のボタンがどうしても見つからないので、ポインター機能を使うことにしたんですね。最初は一部の人から、リモコンを持ち替えるのは面倒だという声もあったんですけど、遊びの要素として、(Wiiのリモコンを動かすポーズをとりながら)サーチするのはWiiリモコンの使い方のひとつとして、アリやろうと。で、実際にやってみると結構いけるんですよね。
─ もし仮に、キューブ版を100としたら、Wii版ではどのくらいの要素が増えたと思いますか?
田邊 増えた要素というよりも、やったことの効果のほうが大きかったと思うんです。作業的には30パーセント増くらいなんですけど、結果は2倍くらいになったんじゃないですか。
─ Wiiで出ることになって、いちばんやってよかったと思えるところは?
上田 個人的には、ボス戦があれだけバリエーション豊かになったのはよかったですね。実はキューブ版では、ほとんどのボスは踏んでやっつけるだけになっていましたからね。
─ イジワルな見方をすると、もともとキューブで作っていたものを、Wiiに移植しただけやん、という声もあると思うんです。
田邊 だから、一部には「移植やのに、なんでこんなに時間がかかってんの」という声もあることは承知しています。でも、せっかくWiiにするわけですから、特性を出さなアカンと思ってましたし、実際、操作の落とし込みに関しては、イズさんもかなり悩まれたと思うんですね。
上田 最初はリモコンをひねるだけで、次元ワザを出せるようにしたりだとか(笑)。
川出 使えるボタンが少ないですから、いろんな操作方法をかなり試行錯誤しましたね。ヌンチャクを使うパターンとか、ジャンプをするときはリモコンをクイッと上に振るようにしたりだとか(笑)。
─ その結果、最もシンプルな操作方法に落ち着いたわけですね。
川出 その点でもWiiにしてよかったと思うんです。キューブのようにボタンが多いと、それらに頼ってしまうんですよね。
上田 キューブだと、この操作は、このボタンに割り振ればいいって安直に増やしがちですが、Wiiのように厳選されたボタン数だとあきらめも入るので、結果として、シンプルでわかりやすいものになったと思います。
川出 結果的にリモコンの裏にあるBボタンは使わなかったんですけど、マリオクラブ(デバックチーム)からは「なんでこれ使わへんの?」という意見もあったんです。でも、気づかないところで、知らず知らずのうちにBボタンを押しちゃうんです。
上田 十字ボタンを使うゲームなので、中指に力が入って、ついBボタンを押しちゃうんですね。
川出 実際にテスト版も作ってみたんですけど、「Bボタンを使うのはやめよう」という結論になったんですね。
田邊 使うボタンが減って、操作がシンプルになりながらも、結果として内容的には何も減らなかったというのはすごいことやと思うてます。
リモコンを持ち替えると…
↑両手持ちのリモコンを、片手に持ちかえてテレビに向けると、あら不思議、それまで見えなかったトビラが出現!

イズが作ることになったいきさつ
─ 今や『ペーパーマリオ』シリーズは、インテリジェントシステムズにとって、3本目の看板ソフト(注4)になっていますよね。そもそもどうしてこのシリーズを作ることになったのですか?
田邊 元をたどると、スクウェア(現スクウェア・エニックス)さんの『スーパーマリオRPG』(96年)なんですよ。あれが出た後に、あのときの中心メンバーのひとりで、今はバンプールにいる工藤(太郎)さん…。
─ あの『もぎたてチンクル』を作った?
田邊 ええ。それで、N64版は工藤さんを中心に作ってもらおうという話もあったんですが、彼はほかのソフトに取りかかっていたので、開発はイズさんにお願いすることになったんです。
川出 だから、N64版の最初のころは、工藤さんと打ち合わせを結構やってたんです。
田邊 オブザーバー的な立場で参加していただいたんです。でも結局、そのときにやろうとしたことは、うまくまとめることができなかったんです。そこで仕切り直しをして、まず「見た目の違いで何か新しいことができんやろうか」ということになって、イズさんから提案されたのがペラペラなマリオだったわけです。
─ そもそも田邊さんは、『スーパーマリオRPG』の開発にもかかわっていたんですか?
田邊 わたしが任天堂の窓口として、スクウェアさんとのやりとりをしていたんです。
─ すごく大変な仕事だったんでしょう?
田邊 いや…でも、当時は工藤さんとかなりやりあったかも?(笑) いちばん最初に、スクウェアさんがマリオに甲冑を着せたアイデアを出してきたんです。その場に宮本もいっしょにいて、ひと言「これは違うでしょう。オーバーオールは脱がさんといてください」って。スクウェアさんとしては、マリオを剣と魔法の世界で活躍させたいと思ってはったんでしょうね。でも、具体的な注文をさせていただいたのは、ほとんどそのときだけで、その後はスクウェアさんのほうでバーッと構築されていったんです。
─ 基本的にマリオは武器は持たないですからね。
田邊 ハンマーだけですね。
─ まあバットは持ったりしますけどね(笑)。
上田 ゴルフクラブもね(笑)。
注4:3本目の看板ソフト
イズの代表作品と言えば、『ファイアーエムブレム』と『ファミコンウォーズ』で、どちらかと言えばシミュレーション系に強い会社だったが、『ペーパーマリオ』は新境地を開いたと言える
工藤太郎さん
↑『もぎチン』の工藤さん(左)。インタビューは、バンプールの茶の間?で行われたのだ(06年12月号で掲載)
試行錯誤したペラペラマリオ
田邊 そんな流れがスーパーファミコンの時代にあって、そのシリーズをN64でもやりたいという話になって、イズさんにお願いすることになったんです。
─ 川出さんは最初から『ペーパーマリオ』にかかわってるんですね?
川出 ずっとディレクターなんです。
─ マリオのゲームを作ってくれと言われたとき、どんな気持でしたか?
川出 普通にビックリしましたね(笑)。
─ どうしてペラペラマリオにしようと思ったんですか?
川出 そこにいきつくまでに、ものすごく時間がかかりましたね。最初はポリゴンのマリオにして、マップも球体のようにしたりとか。
田邊 それが『スーパーマリオギャラクシー』(07年発売予定)になったんです。あ、これ、冗談ですよ(笑)。
一同 (笑)
川出 最初のころは、そのようなものをとにかくたくさん実験で作っていたんです。
田邊 これがなかなかOKが出えへんかったんですわ。やっぱり宮本の頭の中には、本編のマリオとは違う表現を出してくれなきゃアカンというのがあったと思うんですね。そこで、3Dポリゴンモデルを捨てて、ペラペラのという方向性になっていくわけです。
川出 それで、うちのデザイナーから「目が点になったマリオってかわいいよね」という提案があって、宮本さんからも「これならええんとちゃう」という話になったんです。
田邊 主人公がペラペラやから、背景も書き割り(舞台の背景で山河などが描かれたもののこと)などのようにして。
─ N64版が最初に発表されたときは、飛び出す絵本(注5)のようなイメージがありましたよね。
田邊 そうそう。飛び出す絵本みたいにしようと話してたよね。
上田 だから、建物に入るときもパカッと開いたりとか。そんな試行錯誤をしながら、『マリオストーリー』はあのようなカタチになったわけですね。
注5:飛び出す絵本
まさに飛び出す絵本のようなコンセプトで作られたウェブが、『ペーパーマリオ』の公式サイトでチェックできる。(要Flash Player)ただし英文なのでご注意を! → www.papermario.com
深いメッセージを読み取ってほしい
─ それでは最後に、読者へのメッセージをお願いします。
川出 『スーパーペーパーマリオ』は、僕としてはとにかくいろんな人に遊んでほしいと思っています。実は僕の子どもが小学3年生になったばかりなんです。だから、自分の子どもに遊ばせて、それで楽しんでもらえるようなゲームにしたいと思って作りましたし、一方でいろんな層の人にも遊んでほしいということで、会話のネタなんかは大人のユーザーさんにも楽しんでいただけるように作ったんですね。
上田 「次元ワザ」だったり、シリーズ初のアクションアドベンチャーの要素はもちろん楽しんでほしいですね。わたしは仕事として、すべてのセリフやメッセージを読んだんですけど、全部を読むと、メインのストーリーを追っかけるだけでは読み取れないところまでメッセージ性が込められていることに気づいていただけると思います。ですから、いろんなキャラクターに話しかけて、いろんなところを調べて、深いメッセージを味わってほしいと思います。全部をやって初めて、『ペーパーマリオ』の全体像がわかるようになってるんですね。
川出 さきほども言いましたけど、エンディングは自分ではよく出来たと思いますので、ぜひ最後まで遊んでほしいですね。
田邊 おかげさまで、DSで発売された『Newスーパーマリオブラザーズ』が爆発的に大ヒットしました。ユーザーの中にはファミコン版にオマージュを感じた人もいたでしょうし、マリオの名前を知ってたけど遊んだことがないという人がたくさんいたと思うんです。そういう人たちが、初めてマリオを遊んだり、久しぶりにマリオを楽しんでくださった中で、今度はWiiでマリオの新作が出るわけです。『Newスーパーマリオ』とは一味違う世界観のマリオが味わえますし、せっかくマリオに出会った人たちは、今度はWiiで楽しんでほしいなと思っています。
川出 あのう、もうひと言いいですか? このように内容的にもムチャをやってるゲームだったのに、スタッフが積極的に付いてきてくれたんです。そこは「とても感謝してます」ということをぜひ書いてください。
一同 (笑)
川出 「新しいことにチャレンジしよう」って毎度のように言ってきたんですけど、ホントはこれまでどおりのやり方で作ったほうが楽なんですよね。でも、スタッフのみんなは新しいことに積極的にチャレンジしてくれて、それがとてもありがたかったですし、本当にスタッフには感謝してます!
─ 本日はありがとうございました!

 ★今月のZ注目 「田邊さんとフツーの朝ごはん」にも注目!
ありがとうございました
↑楽しいお話をしてくれた3人。ちょっと見えにくいけど、左の上田さんが着ているTシャツに注目! タバコのロゴかと思ったら…(笑)

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