シリーズ10作目の『暁の女神』
─ 1990年に最初の『ファイアーエムブレム(以下FE)』が発売されて、今度の『暁の女神』でシリーズ10作目になるんですね。
成広 長かったですね〜(笑)。
─ シリーズを通じて、どのようなことを表現したいと考えてきたわけですか?
成広 『ファミコンウォーズ』もそうなんですが、シミュレーションゲームをいかに多くの人たちに楽しんでもらうかということが、『FE』シリーズのテーマでもあるわけです。シミュレーションゲームというと、当時はパソコンをやる人しか楽しんでいないようなところもあって、そこをどうやって家庭用ゲーム機で楽しめるようにするかということが、最大のテーマだったわけですね。『ファミコンウォーズ』の場合、キャラクターに個性づけをしなくても、マップだけで駆け引きを楽しめるようなところがありますが、『FE』はキャラクターを育てながら、世界観も一緒に楽しめるわけです。さらに敵の正義や人間臭さも扱っているというところが、シリーズを通しての一貫したテーマだと思っています。
山上 倒すのがかわいそうな敵もいたりしますからね(笑)。
 中間管理職のような敵もいたりとか(笑)。
一同 (笑)
成広 だから、「どうして戦わなければいけないの」といった葛藤や、敵であっても、ただの敵ではないようなところまでも描こうとしているんです。そのあたりはどのくらい読み取ってもらえるかは難しいんですけど、過去の作品を遊んだ方は、敵であっても、登場人物たちがいろんなモノを背負って生きてるということはおわかりいただけてると思います。一般のゲームだと、ボスを倒すのは当たり前という考えに対し、このシリーズでは別の提示ができたのではないかと自負しています。その意味で、とても深いゲームだったりするわけですが、すごく幅広い層のファンがいますので、人によっては深いテーマを感じてくださる方もいれば、一方でシミュレーションの遊びだけを楽しんでいる方もいて、いろんな楽しみ方があっていいと思います。
山上 ホントにそうなんです。その両方を楽しめるのが『FE』なんです。そこは強調したいですね。成広さんが言ったように、わたしたちはできるだけ多くの人たちに、シミュレーションゲームの面白さを感じてほしいと思って、『FE』シリーズを作り続けてきました。今回の『暁の女神』は10作目になるわけですが、より壮大な物語の中に、魅力的なキャラクターが登場し、豪華な映像とサウンドによって、たくさんのお客さんをシミュレーションゲームの世界に引き込めればと思っています。ただ、いろんなお客さんがいますので、物語を中心に楽しみたい人にも、シミュレーションゲームとして楽しみたい人にも、さらに初めてプレイする人にも、幅広い層の方に受け入れていただけるように、さまざまな工夫をしています。例えばパッケージに関しても、これまでのファンの方なら、「ちょっと違うな」と感じるんじゃないかと思います。これまでのシリーズでは、キャラクターを前面に出したパッケージだったわけですが、『暁の女神』では、わたしたちは「動のパッケージ」と呼んでいて、見た目に動きのあるイラストを採用しました。こうしたのも、このゲームの世界観をダイレクトにお伝えし、できるだけ多くの方々の手にとってもらいたいからなんです。『FE』未体験の人にも、1度プレイしていただければ、きっと思いがけない発見があると思っています。
PROFILE
任天堂プロデューサー
山上仁志 やまがみひとし
1966年、大阪府生まれ。『パネルでポン』や『ポケモン』シリーズのほか、数多くのソフトの開発にかかわる。血液型はB型
任天堂プロジェクトマネージャー
俵 正樹 たわらまさき
1971年、石川県生まれ。『ナポレオン』や『ヨッシーの万有引力』、『テトリスDS』などのソフト開発にかかわる。血液型はA型
インテリジェントシステムズ プロデューサー
成広 通 なりひろとおる
1963年、岡山県生まれ。1990年発売の『ファイアーエムブレム』の第1作目から全シリーズの開発にかかわる。血液型はA型
インテリジェントシステムズ プロジェクトマネージャー
樋口雅大 ひぐちまさひろ
1971年、兵庫県生まれ。シリーズ4作目『聖戦の系譜』(1996年/スーパーファミコン)からグラフィックを担当。血液型はA型
インテリジェントシステムズ シナリオ
前田耕平 まえだこうへい
1977年、京都府生まれ。『封印の剣』(02年/GBA)で支援会話、『烈火の剣』(03年/同)以降、メインシナリオを担当。血液型はA型
※本誌掲載時の「プロデューサー」という表記は誤りです。お詫びして訂正いたします。
ファミコンウォーズDS
↑05年に発売された『ファミコンウォーズDS』もインテリジェントシステムズの作品
海外での成功でテレビに戻ってきた
─ 『暁の女神』の開発はいつごろからスタートしたんですか?
山上 前置きがちょっと長くなっちゃうんですけど、『FE』はもともとテレビで遊ぶゲームなんですね。以前、GBアドバンスで出したりしましたけど、僕らの立場で言うと、テレビでじっくり遊んでもらいたい、という思いはやはり強いんです。もちろん、GBアドバンスで手軽にどこでも自由に遊べるというメリットがあったことはわかってはいますが、『FE』の壮大な世界は、大きなテレビ画面で味わってほしい。でも、ゲームキューブ以降は開発費が高騰してきていますし、壮大な世界観を表現するための予算を組むのが難しかったりするわけです。それで、GBアドバンスで『FE』を作ることになったときに、成広さんに「もう一度、テレビに戻したい。これは5年構想です」とお伝えしたんです。テレビに戻すために、世界で売れるようなコンテンツに育てて、その後でテレビに戻りましょうという話をしたわけです。
─ GBアドバンス版の『封印の剣』(2002年)までは、海外では未発売だったんですよね。
山上 そうなんです。GBアドバンスでは3作を出しましたが、それらが海外で一定の成功を収めることができましたので、ゲームキューブ版としてテレビに戻ることができたわけですね。で、前作の『蒼炎の軌跡』が出た2年前は、ゲームキューブの末期と言ってもいいかと思うんですけど、いざ出してみると、本体と一緒に売れたんです。つまり、『FE』はハードを牽引するソフトだということが、より明確になったわけですね。そこで、新ハードが出て、できるだけ早いタイミングで『FE』の新作を出したほうが、本体を普及させるためにもいいのではないかという話になって、最新作はWiiで出そうということになったわけです。もちろんゲームキューブで出したときは、やっとテレビに戻ってきたわけですし、1作で終わらせる気はまったくなくって、壮大な世界観を構想していました。それでWiiが出てなるべく早い時期に『FE』の新作を発売できるようにしましょうということになりまして、ゲームキューブ版が出た直後に開発をスタートさせたわけです。
成広 確か2005年の5月頃でしたから、およそ2年の制作期間でしたね。
動のパッケージ
↑とても動きのある『暁の女神』のイラスト(公式ホームページより)

E3で公開されたムービー
↑06年のE3で『FE』のムービーが流されたとき、欧米の記者から歓声が上がっていたのだ
Wiiの発売時期を目標に開発スタート
─ 2年前の5月は、レボリューション(Wiiの開発コード)が初めて発表されたころですね。
成広 だから、開発を始めたころは、レボリューションの開発機材が届いていなかったんです(笑)。そこで「これくらいのものを準備しても、レボリューションならきっと動いてくれるだろう」というような感じで、クオリティを上げることを優先しながら作っていったんですね。
前田 プログラマーはどのくらい表現できるか、とても心配してましたね。
樋口 「せっかく作ったのに、ホントに動くの?」みたいな(笑)。
─ 『ゼルダ』のように、Wii版とゲームキューブ版を同時に出すようなことは考えなかったんですか。
成広 できないんです。ゲームキューブでは動かないようなクオリティになっているんですね。やはりWiiのほうが性能が上ですし、それをキューブのクオリティで作ってしまうと、Wiiのパワーを引き出せなくなってしまうわけです。
山上 これまでの『FE』シリーズを振り返ると、新ハードの同時発売を目指したことは一度もなかったわけで、今回が初めてのことなんです。さきほどお話したように、ハードを引っ張るようなことがわかっていながら、なかなかそのようなタイミングに合わなかったんですね。だから、「これはチャンスだ!」ってイズさん(インテリジェントシステムズの略称)を口説いたわけですけど、「開発機材がないし、ホントにやるんすか?」みたいな感じで(笑)。「ゲームキューブであれほどの開発費がかかっているのに、Wiiならもっとお金がかかりますよ」って言われたりもしたんですけど、「お金の話は僕が責任をもつから」と言って開発がスタートしたわけです。
─ じゃあ、最初からWiiで出そうということで、ゲームキューブのことはまったく考えてなかったんですね。
山上 まったく考えませんでしたね。

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