力強さが自慢のゴロン族
─ 平原を抜けてカカリコ村に入ると、また光の雫集めが始まります。
青沼 最初のフィローネの森とは違って、室内に潜んでいるので、楽しみ方が変わりますよね。あそこの地形が結構複雑に出来ていますし。マップを手に入れて、雫の位置が表示されても、すぐにわからないような構造にしてるんですね。
─ それだけに解く楽しさがありますよね。カカリコ村は荒野のイメージなんですね。
青沼 今回はハイラル城と城下町がピンポイントで栄えていて、そのほかのエリアはわりと寂れてる感じを出したんです。
─ それで、雫を集めてカカリコ村に光が戻ってくるわけですが、またまたコリンが誘拐されてしまいますね。
青沼 ゲームを続けてると、何のために冒険しているかわからなくなってしまうじゃないですか。そこでモチベーションをもう一度高めてほしいということで、カカリコ村で彼らが怯えてる姿を描いたわけです。それでケモノのリンクが頑張って、彼らを光の世界に戻して、ホッと一息ついて、次はダンジョンだよねと思っているところに、再びコリンがさらわれてしまうわけです。それで、馬上戦で救ったコリンから「ゴロンを助けて」と言われて、モチベーションがグッと上がるわけですね。
─ コリンがベスを突き飛ばすシーンにはグッときました。
青沼 コリンを生み出したのは、『ゼルダ』シリーズではいつもスクリプトを書いている高野(充浩さん=シネマシーン ディレクター)なんです。彼の中には、気の弱い子どもがリンクを見て成長していく様をサブのストーリーとして描きたいという思いがあって、それでベスを助けようとしてコリンは捕まってしまうようなシーンをどうしても入れたいということで、あのような展開になったんです。人を泣かすのが好きですから、高野は。
一同 (笑)
─ それでゴロン鉱山に向かうわけですが、ダンジョンの入り口で相撲をとるのは難儀しました。ドン・コローネは強すぎじゃないですか?
青沼 当たり前ですよ。だってゴロンは力強さが自慢のキャラなんですから。
─ アイアンブーツを履いていても、簡単に投げ飛ばされちゃうし…。
青沼 まあ、ダンジョンに入るためには、その前にかなりの障害を乗り越えなきゃいけないということですよ(笑)。
─ でも、筋肉痛になったくらい大きな障害でした(笑)。
青沼 相撲はそんなに力を入れなくても勝てちゃうんですけどね。
─ でも、力が入っちゃうんですよ。
青沼 入っちゃうんですよね(笑)。もともと相撲という競技にはそんなところがありますから、「力を抜いてやってね」と言ったところでムリなんですよね。そんなところも相撲をとったという実感にもつながるわけで、そこは重要だと思ってるんです。
─ で、ダンジョンの中ではアイアンブーツの使い方が奇抜ですよね。
青沼 もともとアイアンブーツを使って、何か新しいネタを考えようってことで。もちろん従来のようにアイアンブーツで水底を歩けたりするわけですが、それだけじゃ面白くないよねってことになったんです。そこでゴロン族が住んでいる場所を鉱山ということにして、そこには磁力のある岩があるという話にしようと。そうすれば金属で出来たブーツで近づけば張り付くし、壁や天井も歩けるようになると。でも、天井に張り付いて逆さまに歩いたりするという部分は、宮本も言ってたんですけど、リンクの三枚目の部分がしっかり表現できてると思うんです。こういう「そんなアホな」的な三枚目の出来事と、大まじめでニヒルな出来事が混在しているのも『ゼルダ』ならではだと思っているんですね。ただ、磁力のある岩をどのように表現するかについては、かなり迷いましたね。あーだこーだっていろんな表現を作ってみて、最終的にあのような青みがかった鉱物のようになりました。最後はデザイナー任せなところもたくさんあって…。デザイナーにはホントに苦労かけたなあと思っています。
ドン・コローネさん
↑とても相撲が強いドン・コローネさん
ルピーを集める楽しみもいっぱい
─ ダンジョンをクリアしてカカリコ村に戻ってくると、ゴロンが募金を始めますね。
青沼 『ムジュラの仮面』のときにお金を預けるというシステム(注9)がありましたけど、そこから発展させたシステムなんです。人にお金を預けるとなると、「えーっ!」って思っちゃうじゃないですか。さらに募金となると、見返りがあるかどうかもわかんないですし、ドキドキしますよね?
─ 城下町の募金とどっちを優先するか、みたいな。でも、やっぱりゴロンを助けたい一念で、カカリコ村を優先しますよね。
青沼 ルピーって、あるものを手に入れると、そこからは大金は必要なくなっていきますので、今回はルピーをどうやって役立つものにしようかということで、募金システムが生まれたんですね。そこで、ダンジョンでも新しいシステムを取り入れて、財布がいっぱいだと、リンクは宝箱を閉めちゃうようにしたわけです。
─ 後から取りに来ることもできるわけですね。
青沼 でも、これについては賛否両論があったんです。「宝箱を開けたことによって、その部屋に来た目印になってるのに、閉めちゃったらわかんなくなるじゃないですか」ってみんなから言われて。「ずっと『ゼルダ』シリーズはそのようにしてきたのに、今回そうじゃなくなるのはおかしい」という意見があったんですね。だけど、一方では苦労してその部屋にたどりついて、宝箱には50とか100ルピーとかたくさん入っていて、財布が満タンだともらってもいないのに、頂いたことにするのはヒドイという意見もあったんです。
─ そりゃそうですね。
青沼 それでどうしようか悩んだんですけど、買い物とかを遊びとしてフィーチャーしているので、お金はみんながしっかり手に入れられるようにしようと。それで、お金を残していることをしっかり覚えていて、お金が必要になったときに、そのダンジョンに戻ってきてほしいなあと思って、そのようなシステムにしたわけです。
注9:お金を預けるシステム
『ムジュラの仮面』では、ゲームを途中まで進めて、「時の歌」を奏でることで、1日目に戻ることができた。ただ、せっかく集めたルピーはクロックタウン銀行に預けておくと、再挑戦するときに、引き出して使うことができたのだ。預けた金額によってはハートのかけらなどの特典もあった。
後からルピー回収
↑取り損ねたルピーを回収するために、再びダンジョンに入るのもOK。最初に入ったときとは違った感慨も
プログラマーが精魂込めて作った釣り堀
─ さて、前半の最大の山場、「湖底の神殿」の話題に(笑)。
青沼 来ましたねえ(笑)。
─ ここもまた、スケールがホントにでかいですよね。
青沼 「あんなにでかいモノがどうして湖底に眠ってんの?」と思っちゃいますね(笑)。
─ あのダンジョンではクローショットが手に入るわけですが、これまでのフックショットのように、ツタにはヒットしないものと思いこんで、時間をかなりロスしました。
青沼 初登場のクローショットはかぎ爪のようなカタチをしているわけです。ですから編み目のようなところにも引っ掛かるようになってるんですね。でも、シリーズをやっていると、そんなことわからないじゃないですか。それで、ツタの中に的を置いたんです。的に当てようとしたときに「あれっ? ツタにも反応するぞ」って気が付くようにしていたわけですね。
─ ツタの中に的があったので、やっぱり的を狙うしかないなあと思ったんですよね。
青沼 でも、わかったでしょ?
─ 時間がかかりましたけどね(笑)。でも、スケールがあまりにでかいダンジョンなので、にっちもさっちも行かなくなることが結構ありましたね。
青沼 そういうときは、いろんなことを試していけば、必ず活路は開けるようになってるわけです。それが『ゼルダ』のお約束事じゃないですか。よく「ゼルダの方程式」とか言いますけど、今回は「ゼルダの作法」が大事なんです。
─ 特殊なアイテムを手に入れたら、すぐにそれを使う場面があるとか。
青沼 そうですね。そうした作法を身につけたユーザーには、裏切りがないようにはしています。
─ 泳ぐというアクションが結構難しかったりしますよね。
青沼『ムジュラの仮面』のときもそうでしたが、泳ぎを快適にすることに関しては最後まで悩んだところなんですよ。これは永遠の課題かもしれない(苦笑)。
─ 最初の3つのダンジョンをクリアすると、その後がとても自由になりますね。
青沼 フィールドがつながりますからね。あちこち自由に行き来できるようになって、いつもの『ゼルダ』に戻る感じですね。
─ 釣堀も開放されますし。釣堀は1本のソフトとしても発売していいくらい、完成度が高いですね。
青沼『時のオカリナ』のときから、ずっと作り続けているプログラマーの森田(和明さん=プログラムディレクター)が精魂込めて作ったんですよ。
─ 森田さんの趣味は釣りなんですよね。
青沼 ホントに大好きですね。彼はとにかく釣り好きのために頑張ったんです。『風のタクト』では釣りができなかったので、ものすごく悔しい思いをしたんじゃないでしょうか。「誰だ! 海を不透明にしたのは!!」って(笑)。
一同 (爆笑)
─ 不透明だと釣りはできないんですか?
青沼 やっぱり魚影が見えないから、いつ魚をキャッチしたのかわからないじゃないですか。それで、森田には「今回は好きに作ってね」って言ったら、あんなに豪華なものが出来あがっちゃったんです。Wiiリモコンを使った操作性に関しても、すべて森田がやってるんです。僕にとっても釣堀は聖域で、まったく口が出せなかったんです(笑)。
─ Wiiリモコンとの相性がすごくいいですよね。
青沼 釣りのために作ったリモコンだと思ったくらいですから(笑)。NOAのスタッフの中に、夫婦でバス釣りを楽しんでる人がいまして、来日したときに触ってもらったんです。それで操作方法の説明もしてないのに、いきなり釣りを始めて、1尾釣ってから、「これはすごい!」って。それで「どうして何も教えてないのにできるの?」って聞いたら、「だって、いつも釣りでやってることと同じことをしただけだ」って(笑)。こんなことができるWiiリモコンは、やっぱりスゴイと思いましたね。
─ ところで、あの釣堀には四季があったり、気候も変わりますよね。例えば雨が降ると、釣りやすさは変化するんですか?
青沼 そんなの、入れてるに決まってるじゃないですか!(笑) 雨が降った後は水が濁りますからね。だから、プレイヤーはそのような状況の変化を見て、釣りを楽しめるわけですよ。ただ、そのような気候の変化を入れたいと森田から言われたときは、「えーっ、そんなことまで入れちゃうの? そんな時間があったら…」って思ったりしたんですけど、「それがないと釣りじゃない」と言われて(素直に)「どーぞ!」って(笑)。
一同 (笑)
青沼 そこまでこだわって作ってるわけですよ、あの釣堀は。
泳ぐリンク
↑『時のオカリナ』で最大の難所だった「水の神殿」。息ができないんだもん
『風のタクト』の海
↑絵の具を流したような青い海だった『風のタクト』

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