
─ トアル村を出たら、すぐにオオカミに変身しちゃいますよね。しばらくかっこいいリンクで冒険できると思ったんですけど、これって早すぎじゃないですか?
青沼 実はもともとは、もっと早くオオカミになる予定だったんです。冒頭からいきなりオオカミになっちゃって、かっこいいリンクを味わう間もなく変身する予定だったんです。ところが宮本が「アカン、こんなんじゃ」って言ってきて…。
─ それで、トアル村で3日間を過ごすシステムが生まれたわけですね。
青沼 『風のタクト』のときも、妹を助けなきゃいけないということで、魔獣島というワケのわからない場所に連れてこられるじゃないですか。僕、そういうのが好きなんですよ。のっけからワケのわからない状態にされちゃって、「どーしたらいいの?」っていうところから、先に進むにつれ、何となくわかってきて、「ああ、これは運命だったんだ」と思ったりするようなことが、物語を考えていく上では好きだったりするんです。『時のオカリナ』のように、順当にひとつひとつのことをこなしていって、途中でどんでん返し(注7)のようなことが起こることも嫌いじゃないんです。でも、今作を作るにあたっては、冒頭から…ある日目覚めたらいきなりオオカミになっていた、なんてことも考えたくらいですから。
一同 (笑)
青沼 実はオオカミを考えたのには経緯があって、3年くらい前に「次の『ゼルダ』をどうしよう?」と考えているときに、さっき話したGDCに行ったわけです。それで、サンフランシスコのホテルで目を覚ましたときに、なぜか自分がどこにいるのかわからなくなっちゃったんですね。記憶が飛んじゃってるんです。しばらくしてから「そうか、オレはアメリカにいるんだ」ってわかったわけですけど、GDCでスピーチをしなきゃいけないとか、心的ストレスが高かったのかもしれないですね(笑)。そんな状態に陥ったときに、「次の『ゼルダ』の冒頭は、いきなりリンクが捕まっている状態になって、しかもオオカミだったら、みんなどのくらいビックリするかなあ」と、急にそんなことを思いついたんです。
─ なるほど。
青沼 そのときは、完全に『時のオカリナ』の続編的なことを考えていて、そこからの時間の流れの中で…とか考えていたんですが、初めて遊ぶ人には、いきなりオオカミからゲームが始まったら何のことだかわからないと思い直して、今回のように冒頭は普通のリンクの状態で始めるようにしたわけですね。
─ オオカミになると、辺りは暗いし、背中にはミドナが乗ってるし、ってことで、ダンジョンとは別のストレスを感じちゃいますよね。
青沼 これまでのシリーズは、フィールドとダンジョンはキッチリ分けていましたよね。でも、フィールドもダンジョンのように遊べないだろうかと考えた結果、今回の光の雫集めに結びついているわけです。
─ とても暗くて、イヤなんだけど、だからこそ逆にどうしても光を取り戻したいというモチベーションにつながるわけですね。
青沼 そうです。だからこそトワイライトの世界を居心地の悪い世界にしなければならない。そこにずっと居続けると、不快に感じるような世界でありながら、あまりに不快すぎると、ゲームを続けるのがイヤになっちゃいますよね。だから、そのぎりぎりの線をねらっていて、BGMにしても、不協和音的な音とちょっと気持悪いエコーがかかった感じにして。だけれども、若干メロディアスな音も流れているような…。サウンドスタッフに対しては、「イヤだけど、それほど不快でもなくって、なんとかしなきゃあって思えるような曲。しかも空気感が感じられるように」ってお願いして。「えーっ? どんな曲を作ったらいいんですかー?」って話になりましたけどね(笑)。でも、最終的にはすごくいいサウンドが出来たと思っています。トワイライトの世界を抜け出すと気持がいいでしょ?
─ ええ。深夜に見知らぬ土地に着いて、朝になってから「こんな町だったんだ!」という気分ですね(笑)。
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注7:どんでん返し
例えば『時のオカリナ』に登場したシークが、実はあの人だった、というようなこと。ちゃぶだい返しとは関係ありません。
↑『時のオカリナ』の発売は1998年11月21日。あの感動から8年も過ぎちゃったんですね
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─ 最初のダンジョンの「森の神殿」。ここで出会ったおばちゃんにはビックリしました(笑)。
青沼 (笑) 最初はダンジョンをワープして、単純に外に出られるアイテムを作りましょうということだったんです。それがいつの間にかおばちゃんになってしまって(笑)。
─ おばちゃんという名前と見た目がダブルパンチでインパクトがありますよね(笑)。
青沼 最初は壺の中に入っている何かを手に入れると、そのようなことができますよということだったんです。そうなれば魔法の玉のようなものでもいいわけです。だけど「そんなんじゃつまんないよね」という話をしているところに、後半のダンジョンでのエピソードとリンクさせるというアイデアが生まれたんですね。その話はネタバレになるので、詳しくは話せないですけど、あとで謎がわかるようになっているわけですね。
─ でも、どうしておばちゃんという名前にしたんですか?
青沼 それは僕もまったく想定していませんでした。スクリプト担当が、おばちゃん言葉でセリフを書いていたので、自然におばちゃんと呼ばれるようになったんですね。おばちゃんの息子もヤバーイ感じで出てくるし(笑)
一同 (笑)
─ それにしても、のっけからダンジョンのスケールがでかいですよね。
青沼 「森の神殿」はもともと、昨年のE3の出展に合わせて「今度の『ゼルダ』のダンジョンはこんな感じです」ということで作ったわけです。スタッフみんなが、全力で作ったので初っぱなからでかいものが出来ちゃったわけですが、大きいのにはワケがあって、あの森の神殿には、サルを助けるというテーマがあって、各部屋に捕まっているサルを救出することでダンジョンの先に進めるという構成で、E3のときにお見せした前半戦と、さらに後半にもサルを助けていって、最後の大きな出来事につながるという構成になってるんです。
─ なるほど〜。E3で遊んだときは、サルは4匹だったので、あんなにたくさん出てくるとは思いませんでした。
青沼 スケールという話だと、もうひとつのテーマである「風」を感じてもらうために、ダンジョンの中に風が吹き抜ける谷が出てきたりするので、そういうスケール感は大事にして、遊びをコンパクトにまとめる方向で考えました。
─ それにしても今回は、ダンジョン史上に残るくらい、多品種で大きなスケールになっていますよね。
青沼 たぶんこれまでのアドベンチャー系のゲームの中では、ダントツトップでしょうね。でも、確かにでかいんですけど、ダンジョンって普通は閉鎖的ですよね。僕が『時のオカリナ』のときに設計したのも、閉鎖的なダンジョンばかりだったんです。でも今回はオープンエアなものも多くて。
─ 「ゴロン鉱山」の一部もそうですよね。空が見えていて、気持がいいです。
青沼 でも、構成はダンジョンなんです。扉があって、仕切られているわけです。本当は『時のオカリナ』のダンジョンのように、囲ってしまうと作るのも楽なんですよ。今回のようにオープンエアにすると、外との関係など意識しないといけないわけですから、きちっとまとめるのはかなり大変なんです。でも、キツイとはわかっていても、これまでにないものを作りたいという気持がダンジョンチームにあって、それが今回のスケール感にもしっかり結びついていると思っています。
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↑めちゃくちゃインパクトのあるおばちゃん。「親切な人」って書いてあるけど、おばちゃんって人なの?
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─ 最初のダンジョンを抜け出すと、ハイラル平原に出られるようになって、その開放感がとても気持いいですよね。そこにポストマン(注8)が現れて…。
青沼 「ここで来るか!」って思ったでしょ?(笑)
─ ホントに(笑)。キャラクターデザインも含めていいですよね〜。
青沼 『風のタクト』のときは、手紙システムというのがありましたけど、今回も手紙でリンクを導いてあげようと思ったんです。ミドナは自分の目的に関することはいろいろ教えてくれるけれど、それ以外にハイラルに住んでる人たちが導いてくれることも大事だと思って、あのような手紙のシステムを入れたんです。ポストマンはハイラル平原に出れば、かなりの頻度で遭遇しますので、ダンジョンをクリアした後も、とりあえず平原に戻ってみようかなという感じで遊んでいただくといいかなと思っています。
─ ポストマンは平原だけでなく、いろんな場所に隠れてますよね。
青沼 あれもスタッフが、ポストマンがリンクに会うために出てくるだけじゃなくて、「こんなとこで何してんの、 こいつ? みたいなことになると面白いよね」ということで、開発の最後に頑張って入れてくれたんです。
─ ハイラル平原には、1本足のすばしっこい変な生き物もいますね。
青沼 ものすごく走り回るでしょ?(笑) あれの開発名称はクレイジーランナーと言うんですが 「こんなおかしなモンスターもいてもいいよね」ということで、開発の初期段階から走り回っていたんですよ。ただ「普通に倒してルピーが出てくるだけじゃつまんないよね」ということになって…。変なものを出してくるでしょ?
─ あれって何ですか?
青沼 あれをビンに詰めて使うと…。
─ ビンに詰められるんですか!(笑)
青沼 実はあれ、ミミズなんです。釣りのエサなんです。今回の浮き釣りはいろんな場所でできるんですけど、エサをつけると違った種類のサカナが釣れるので、ぜひあのクレイジーランナーを倒してもらって、釣りも楽しんでほしいですね。
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注8:ポストマン
『時のオカリナ』でマラソンマンとしてデビューし、『ムジュラの仮面』では就職に成功し、ポストマンとして再デビュー。『風のタクト』でも、ちょい役で出演するなど、シリーズの準レギュラーの地位を確立しつつある。
↑手紙でわらしべイベントが発生した『風のタクト』
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