平和が戻ったハイラルから百数年後の世界
─ 『トワイライトプリンセス』の時代はいつ頃の設定になってるんですか?
青沼 『時のオカリナ』から百数年後の世界です。
─ 『風のタクト』とは…?
青沼 『風のタクト』はパラレルなんですよ。『時のオカリナ』でリンクが7年後の世界に飛んで、ガノンを倒すと、子ども時代に戻るじゃないですか。『トワイライトプリンセス』は、平和になった子ども時代から百数年後の世界なんです。『時のオカリナ』のラストシーンで、子どもになって戻ってきたリンクとゼルダ姫が会話をしますよね。その話の結果によって、ガノンを加えた3者の関係が異なる方向に向かうということをちょっと引きずっているのが今回の物語なんです。今作の中盤では、ガノンが処刑されるシーンが出てきますよね。彼をほおっておくと、後にとんでもないことをしでかすヤツなんだということで、処刑することになったわけです。だから、あのシーンは『時のオカリナ』から数年後の話です。それで、処刑されたガノンはある世界に送り込まれて、今回はその力を手に入れようと…。
─ そのあたりの話は、ゲームをやってからのお楽しみということで(笑)。
青沼 まあ、そんな流れになっています(笑)。
─ でも、会話の中にキングゾーラ(注5)の話が出てきたり、釣堀のおっちゃん(注6)の写真が飾ってあったりと、ところどころに『時のオカリナ』の時代が昔だということを感じられるようになっていますよね。
青沼 あのへんは、『時のオカリナ』と関係ある物語だということで、「こんなこともやっちゃっていいですか」みたいな感じで、スタッフの遊び心でどんどん膨らんだ部分なんですね。
─ カカリコ村やハイリア湖など、おなじみの名称になっているのも、百数年後ということを意識してるんですか?
青沼 明確にカカリコ村の百数年後ということを意識してデザインしたわけではないんです。こんな村があって、そこではこんなイベントが起こるんだという話になったときに、「じゃあ、ここはそのままカカリコ村にしましょう」という感じで決まっていったんですね。今作では、フィローネの森とかオルディンといった新しい地名が出ていますけど、これは『時のオカリナ』の三大神の名前からとりました。『時のオカリナ』の時代にはそんな地名はありませんでしたけど、長い年月がたって、住んでいる人たちがその名前を親しみを込めて継承しているということにしたわけですね。
リンクとゼルダ姫
↑『時のオカリナ』のリンクとゼルダ姫。これは冒頭の出会いのシーン
注5:キングゾーラ
『時のオカリナ』に登場したゾーラ族の王。正式名はド・ボン3世。
注6:釣堀のおっちゃん
『時のオカリナ』で、ハイリア湖のほとりで営業していた釣堀の主人のこと。
風見鶏の上にのっていたネコ
─ それでは、物語の流れに沿って、駆け足でゲームの中盤あたりまでの話を聞きたいと思います。まずトアル村。
青沼 発音がちょっと違います。(ルの音にアクセントをつけて)トア村です(笑)。
─ 失礼しました(笑)。トア村、ですね。で、この村ではネコに苦労した人が多かったと思うんですよね。
青沼 あれは宮本といっしょに悩んだところではあったんです。でも、「最初から答えを言っちゃあおしまいだよね」という話になりまして。
─ ヒントは出るんですけどね。
青沼 ヒントがあって、それに気が付いてくれる人じゃないと…。
─ それから先はもっと大変なことになる!(笑)
一同 (笑)
青沼 あのネコを解決しない限りは先に進めませんしね。あの村にはいろんな道具が用意されてるわけですから、そこでいろんなことを試してみようという気持が、その先で役立ってくるわけですよね。『ゼルダ』ってそういうゲームじゃないですか。いろんなことを試すことで解答が見つかるというのが、『ゼルダ』の基本ですよね。その基本を理解していただくためには、「こうすればネコは解決する」ということを村の誰かに言わせちゃったらおしまいだなあと。でも実を言うと、最初はそういう仕様でした(笑)。
─ イジワルだなあと思ったのは、水車小屋の中のイヌはダッコできるじゃないですか。そしたらネコもダッコできると思っちゃうのは当然じゃないかと。
青沼 なるほど。でも、そこでハタと思うのは、イヌは人に従順だけど、ネコはそうじゃないところもあって。
─ まあ、そうですけどね(笑)。それでダッコできないから、タカを使って捕まえようとするわけです。
青沼 そこはE3で出したバージョンがそれに近かったんですね。風見鶏があって、その上にネコが載っかってて下りられない状態があったんです。そこでタカを飛ばして、ネコを落とすという流れだったんですけど、宮本から「こんな、非現実的なことはないよね」って、怒られちゃいまして(笑)。「そもそも風見鶏の上にネコが載っかるようなふざけた話はないだろう!」と。宮本の基本的な考え方は、リアリティのないことをユーザーに見せて、それに対して「答えを見つけなさい」と要求しても、解答が思い浮かぶわけがないということなんです。だから、今作を作るにあたっては、宮本と「ゼルダの作法」という新しいキーワードを使って話をしていたんです。自分たちの日常生活にある何気ないものを見せて、「もしかして、こうすればこうちゃう?」ってことで、何かを試して、その結果が思ったようにできたらすごくうれしいけれど、そういう普通の発想が浮かばずに、何か適当にやってるうちに何となくできましただと、「それは作法にかなってないやん」になってしまうと。だから、風見鶏の上にネコが載っかるような非現実的なことは絶対にダメということなんですね。
─ それで、ネコは川辺でサカナをもの欲しそうにしているようになったんですね。
青沼 やっぱりプランナーがネタを考えるときは、まず仕組みから考えるじゃないですか。タカを使ってネコを助けましょうという流れを作ると、タカで助けるためのネコのシチュエーションを考えなきゃいけないわけです。そうすると、多少、異常な状態に持っていかないと、タカで助けるという引っ張りが弱いと感じちゃうんですね。それで、いきなり風見鶏の上に載っけちゃうようなことになったわけです。
─ なるほど。
青沼 (照れくさそうに)あのう、「プランナーが考えた」と言いましたが、風見鶏の上にネコを載せたのは僕でした(苦笑)。
一同 (笑)
↑昨年のE3で初めてプレイアブルで出展された『ゼルダ』。当時はトワイライトの世界はモノクロだったのだ
ヤギ投げから生まれた相撲アクション
─ あと、トアル村には牧場もあって、山羊にイタズラすると怒りますよね(笑)。
青沼 (笑) 牧場で山羊追いをすることになったのは、「リンクってふだんは何をする人なの?」ということを考えたとき、田舎の村で育って、そこには牧場があって、馬に乗れて、山羊も育ててる感じでしょうと。それで「リンクは牧童」という設定にして、端的に遊べるものということで「山羊追い」のイベントが生まれたんです。でも、宮本から「山羊を追うだけなの? ほかにも山羊を絡ませる遊びを作ろうよ」って言われて、突進してくる山羊を投げ飛ばすイベントが生まれました。
─ 山羊を投げ飛ばすというアクションは、その後のゴロンと相撲をとるというイベントに結びついてるんですか?
青沼 もちろんそうです。山羊を投げ飛ばすアクションが入ったときに、宮本から「これを使って少なくとも3回は別の遊びができるようにしてね」という指示が出たんです。「ボス戦にも使おうよ」って。
─ 巻頭ムービーにも入っている、ゴロンの中ボスを投げ飛ばすところですね。
青沼 そうです。つまり1つのネタを作ったら、その応用ネタをいろんな場面で使えるようにすると、そのネタが生きてくるわけです。それで「絶対に山羊投げだけで終わらせないでね」と宮本に言われて…。
─ それが最後の最後では、あんなふうになっちゃうわけですね。
青沼 そう。お楽しみのために言えないですけど(笑)。だから、今作は山羊投げに始まり、山羊投げに終わるゲームなんですよ。
─ そこまで重要ならそれをサブタイトルにしようということはなかったんですか?
青沼 どういうサブタイトルですか?(笑)
─ 『勇者の山羊投げ』とか…。全然ダメですね(笑)。
青沼 山羊投げに終わるというのは半分冗談なんですけど、冗談ではない部分は、これまでのシリーズでやったことのない部分をどれだけ入れられるかということを考えたわけです。それに、あのようなアクションを入れることで、リンクがキャラ立ちするというか、リンクという少年を描く上で、重要なポイントになってくるわけです。山羊投げという動きを入れて、「リンクってこういうことをしちゃう若者なんだ」と、作っている側も認識し始めると、ダンジョンの扉の前に立ったとき、リンクが力を込めて、それをガッと開くというモーションが自然に生まれてくるわけです。それまでのシリーズでは、Aボタンを押せば、入り口が自動ドアのようにガラガラっと開いていたでしょ?
─ なるほど!
青沼 大人に向かって少し背伸びをしたいようなやんちゃなリンクという部分に、田舎で育つことによって体力に自信があるというイメージが加わった感じなんですね。
─ 野生児なわけですね。
青沼 そうそう。そうじゃなければ、山羊をぶん投げたり、自然の中でたくましく生きていけるような青年にはならないわけです。もともとリンクは中性的なイメージの青年ではあるんですけど、男らしい力強さも備えてるというところが、今作ではしっかり表現できてると思っています。だから女性ファンの皆さんは、あるシーンではとても引きつけられちゃうんじゃないかと…。ねえ(笑)。
─ ねえって言われても(笑)。ああ、お相撲さんのシーンですね?
青沼 そう(笑)。あの半裸のリンクをやっているときは、うちの女性のスタッフたちも、「これは違う」とか「ライトの当て方がなっていない」とか、結構キビシイ意見を言ってたんです。
一同 (爆笑)
山羊小屋
↑山羊投げをした後、山羊小屋をチェックすると、ちゃんと1頭減ってるんですよね(写真は、昨年のE3で公開されたもの)
ゴロンと相撲
↑とってもりりしい、初のまわし姿になったリンク。ゲームをクリアすると半裸リンクで冒険できるようになります(ウソ)

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