宮本茂 時雨殿で10年を語る。

N64の反省から生まれたGC
─ そういった中でGCの時代が来たわけですが。
宮本 世間の人たちがまだまだゲームをするという前提でつくったのがGCですよね。ところが、コアなマーケット自体が弱まっていく傾向にあって、GCはプレステ2よりもずっと高性能だったわけですから、ゲームをつくる上では優位にあった。でも、DVDも見られた方がいいやろとか、ささいなきっかけから大きく溝をあけられてしまったんです。
─ GCを発表したときに「N64の反省」ということを表明して、ソフトも開発しやすくするなど、GCの戦略自体は間違っていなかったと思うんですよね。
宮本 そうですね。やっぱりサードパーティと一緒にやっていくところで、メディアをロムカセットから光メディアにしていかなアカンと。そして、ソフトを守るためにはセキュリティを強化しなければということで独自の光メディアにとか、やるべきことは全部やったんですけど、ちょっとうまくサードパーティと絡めなくて。それはさっきのDVDが見られるかとかのささいな状況でお客さんが離れてしまったとか、“これぞ”という決定的なソフトが用意できなかったことに関係しているんですね。“たられば”じゃないですけど、それぞれのマーケットでの決定的なソフトを任天堂がつくることができなかったわけなんです。じゃあ、「GCの後、次回こそは、決定的なソフトをつくろう!」ということで、もっと性能を上げて、決定的なゲームをつくろうというのが自然な流れだったんですが、「ちょっと待て、娯楽の本流がいつまでもそちらにあるとは限らへんぞ…パラダイムシフトが必要なんだ」と…。それがWiiの流れになってくるわけです。
─ だから、Wiiのことを次世代機と呼ばないわけですね。
GC発表会の様子
↑GCの発表会で「ロクヨンの反省」を語るハード開発責任者の竹田玄洋さん


宮本さんと三上真司さん
↑GCの発表直前には「『バイオハザード』独占供給」を発表し、サードパーティとのコラボも順調のように見えたのだが…
Wiiは可能性を秘めたゲーム機
─ そうなってくると、Wiiのキャッチフレーズって何になるんでしょうか。
宮本 それは“もう1回、猫も杓子も”ですよ。
─ ファミコンとスーパーファミコンの10年。N64、GCの10年。そして、また新しい10年がWiiから始まるわけなんですね。
宮本 ここからスタートですね。
─ 今発表されているタイトルなどを見ても、WiiはN64やGCに比べてテンポよくソフトが出てきそうですね。
宮本 ハードの基本はGCですからね。開発ツールは今度バージョンアップしますけど、GCのプログラムがほとんどそのまま使えるんです。そういう意味で、僕はGCのソフトをWii用につくり直してもいいと思っていて、Wiiリモコンに変わることで良くなるものも出てくるんじゃないかなと。
ピクミン"
↑GCで2作発表された『ピクミン』も、Wii用にリメイクされて出る可能性も?
─ Wiiのリモコンを使うことによって、生まれ変わるGCソフトもあると。
宮本 そう。もちろん、今でも中古屋さんに行けば売ってるわけなので、フルプライスで出すっていうことはできないと思うんですけど、開発費自体は一度消化してるわけで、お手ごろな値段で出せるようになるんやないかなって。そういったGCタイトルをWiiタイトルにつくり直したタイトルが早く出せるようになってくれば、サードパーティからもたくさんのソフトが発売される可能性も出てきますよね。
─ ということは、任天堂がそういうことをやる可能性もあるんですね。
宮本 うん。わりと考えてます。だから、今度の『ZELDA』をWiiとGCの両方で出すということが、結構面白い試みなんですよ。
─ なるほど。そういうことですか。
宮本 一時期はスタッフの中からも、「WiiはGCよりも能力があるんだから、グラフィックをもっと磨きこみたい」って声が出てきたんですよ。だけど、『ZELDA』のお客さんは磨きこみを期待しているのではなくて、面白いゲームを期待しているんやから、WiiでもGCでも面白いモノをつくればいいじゃないかって話をしていて。最近になってようやく「Wiiは次世代のグラフィックを求めているハードじゃないんだ」という意識が定着してきました。もちろん、グラフィックが求められるゲームもあるので、ソフトによってつくり分けていくことになりますね。
─ Wiiに求められるのは高性能ではなくって、もっと違う方向に価値があるということですよね。
宮本 うん。“親子で遊べる”っていうことを、僕はこれまで夢のように語ってきたんですけど、やっぱり今までは多少の無理があったんですよね。でも、Wiiはかなり無理がない気がするんですよ。こんなに可能性のあるゲーム機はないんじゃないかなって思うんです。
『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』
↑Wii版とGC版が同時に出る予定の『ZELDA』。新旧2つのハードで同時につくることは、開発者にとって大きな経験に


チンクルシーバー
↑『風のタクト』のチンクルシーバーも、宮本さんの「親子で遊べる」という願いから生まれたシステム

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