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前編

ゲームユーザーの世代は10年区切り
─ ちょっと前の話になりますが、シュバリエ章受勲おめでとうございます。今日はその勲章をお持ちいただいたんですよね。
宮本 はい(と言って、カバンから勲章を取り出す)。
─ これが本物の勲章なんですね!受章されたときのお気持はいかがでしたか?
宮本 ああいうことって、ほかの人が表彰されて、それを客観的に見ているとわかるんですけど、いざ自分が当事者になってその場に行ってみると、何がなんだかわからないところがありますよね(笑)。
─ そうでしょうね(笑)。これまで宮本さんはいろいろな賞を受けられていますが、今回の受章はまた意味合いが違いますよね。
宮本 そうですね。今まではゲーム業界の中での賞というのがほとんどだったんですけど、これはそうじゃなくて、「ゲーム業界の文化的貢献を認めます」というものですから。ゲームビジネス全体としても、フランスとの交流の上でゲームが非常に重要な役割を果たしたということを示してくれているわけで、本当にありがたいですね。
─ 手前みそですが、おめでとう続きということで、ニンドリも10周年&150号を迎えることができました。
宮本 おめでとうございます。
─ ありがとうございます。ファミコンが発売されて23年が過ぎ、そのなかで10年というのは「まだまだ」とも言えるわけですが、この10年間ってどんなふうにとらえたらいいんでしょうか。
宮本 あっという間でしたね。
─ あっという間ですか…。10年間、雑誌にかかわった立場から言うと、すごく長かったような。実際に、据え置き型ゲーム機だけでも、N64やGCが発売され、もうすぐWiiも出ようとしているわけですから。
宮本 そういった意味じゃ、ゲームユーザーの2回目の世代が終わったということですかね。10年前にN64が出て第2世代が始まって、ここ最近急激に日本のマーケットが冷えてきましたよね。
─ ああなるほど。10年区切りっていうのはあるのかもしれませんね。
宮本 現状のことで言うと、ゲーム業界そのものを、携帯電話の攻勢からどうやって守るのかとか、そういうことではなくて、携帯電話はあって当たり前のような存在になっているし、フリーターと呼ばれる人たちも、今や産業構造に欠くことのできない存在になっているわけです。そういった点だけでも、10年前とは大きく変わってきているわけで、このような時代にゲーム機をもう1度見直してみようという時期になったかなと思いますね。
─ ちょっと前まで、「ゲームが売れなくなったのは、携帯電話のせいだ」と言う業界関係者が多かったですよね。
宮本 そう。でも、DSはこんなにたくさん手に取ってもらっているわけでしょ。そういった見直しを、DSではやったつもりやし、据え置き型でももう1回やろうと。パソコンだって、本当に来年発売される新しいOSの方が過去のものよりいいのか? 同じような事を繰り返していたら未来があるっていうのは、これまでの10年間で一区切りが終わったんじゃないかなって思ってるんです。その意味では、1996年以前の10年間の方が“新しいモノをどんどん取り入れていく10年”という感じだったと思います。それまでは業務用のゲーム機がいちばん高級で、実際に上位技術を使っていたわけですが、「家庭用の機械の技術の方が数の威力を生かして上位になった」ってなったのがちょうど10年前かなと思うんですよ。そして、それから10年たって、今度はゲーム機の存在自体をもう1度見直そうというところへきていると。でも、10年ってひとことで言うけど、話すとなるととても難しいですよね。それに、この話はサオさんに対してじゃなくって、ニンドリの読者さんに対してわかりやすく話さなアカンわけでしょ(笑)。
─ まあ、10周年記念インタビューですから、気楽にいきましょう(笑)。
PROFILE
宮本 茂 みやもと しげる
任天堂専務取締役 情報開発本部長 
ご存じ『マリオ』『ゼルダ』をはじめとした数々の傑作を生み出してきたゲームクリエイター。
1952年
11月16日京都府園部町生まれ
1977年
金沢美術工芸大卒、任天堂入社(配属は企画部)
1990年
日本文化デザイン賞 受賞
1996年
日本ソフトウェア大賞 '92 MVP 受賞
1996年
朝日デジタル・エンターテインメント大賞 ホーム部門個人賞 受賞
1997年
第5回日本ソフトウェア大賞 MVP 受賞
1998年
THE HALL OF FAME AWARD 受賞
マルチメディアグランプリ1998
MMCA会長賞 受賞
2003年
Hall of Fame Industry Personality of the Year Award 受賞
2004年
eAT' 04 KANAZAWA名人賞 受賞
2006年
フランス政府芸術文化勲章シュバリエ賞 受賞
※個人で受賞されたもののみ掲載しています
時雨殿について
時雨殿
今回のインタビューの舞台となった時雨殿は、最新のテクノロジーを使用した体験型のテーマパーク。2006年1月27日に開館し、小倉百人一首文化財団が運営。
開館時間 10:00〜17:00(入場は16:30まで)
休館日 月曜日、年末年始
入館料 高校生以上800円、小中学生500円

交通など詳しくはホームページを参照!
http://www.shigureden.com/
シュヴァリエ勲章
↑これが、宮本さんにお持ちいただいたフランスの勲章。本物を見るのは初めて!
この10年で時代が大きく変化した

宮本 しかし、この10年で時代は変わりましたね。今年もアメリカでサオさんたちと偶然会って、お話しましたもんね。
─ E3の最終日の夜に、ハリウッドのカフェで偶然お会いしたんですよね。あのときお会いしてなかったら、時雨殿でのインタビューはなかったかもしれませんね。
宮本 ……?
─ あのとき、宮本さんの方から、10周年インタビューは時雨殿でやろうかっておっしゃっていただいたんですよ。
宮本 そうやった(笑)。でも、あのときいろんな話ができたから、今回のインタビューでも、サオさんから「もうそれE3で聞きましたよ」とか言われちゃうんやないかと心配なんですよ(笑)。
─ そんなこと、言うわけないじゃないですか(笑)。宮本さんの話は何度聞いてもタメになりますし。
宮本 でも最近は岩田(岩田聡さん=任天堂社長)がわかりやすいプレゼンテーションをしているので、あれを聞いてもらえれば、Wiiに関してもしっかり理解してもらえているんじゃないかと。
─ 岩田さんのプレゼンテーションは本当にわかりやすいですね。
宮本 昔は僕がいろんなインタビューを受けなアカンかったけど、今はもう、そういうことをしなくてもよくなってきたんですよね。(ハッとした表情になって)大学のころの写真とかをお見せしたのが10年前でしたっけ?
─ そうです(笑)。ちょうど10年前の夏に、初めて宮本さんのインタビューをさせていただいたんです。そのときに、子供のころの写真などをお借りしたんですね。
宮本 そうか、あれから10年になるんやね。
─ それで、初インタビューの前に、宮本さんのことをいろいろ調べようと思って、当時はインターネットが一般的ではなかったので、パソコン通信で調べたんです。有料の人物データベースだったんですけど、宮本さんを探したら「1件ありました」って表示されて、「さすが宮本さんだ!」と思いながら読んだら、「大正生まれ。陸軍中尉。ビルマ山中で行方不明」って(笑)。
一同 (笑)
宮本 ほかにも独自の農法を生み出した人とかもいませんでした?(笑) しかし、それはデータベースが悪いですね(笑)。
─ 悪いですね、有料なのに(笑)。でも、今はインターネットで宮本さんを検索すると、10万件以上出てくるわけじゃないですか。だから、10年前ってすごい昔だったんだなあと思うんです。
宮本 今や、DSでもインターネットが見られるような時代になったわけやしね(笑)。
E3での宮本さん
↑E3は、クリエイターとメディア関係者が交流できる数少ない場。パーティ会場でうれしそうにWiiのポーズをとる宮本さん、伊藤あしゅらさん(中央)、そしてサオヘン

アップルシーズ時代の宮本さん
↑創刊2号で掲載した宮本さんの大学時代の写真がコレ。アップルシーズというバンドを結成し、パブなどで定期的に演奏活動を行っていたのだ(宮本さんは中央)

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