
─ 少しイジワルな話をすると、ニンドリのインタビュー(2000年2月号)では「片手で操作するようになったらゲームはすたれる」って、宮本さんはおっしゃってましたよね。
宮本 「片手で遊びたい」なんて言うヤツは遊ばんでええ、とか言いましたね(笑)。それはゲームの中に、どっぷり入り込んで分身のように自分が扱うっていう、あくまでファミコンやスーパーファミコンのコントローラのことですよ。そうして遊ぶようにつくったゲームを、片手で遊びたいって言われても、そういう人には遊んでもらいたくないっていう意味ですね。けど、現在って、そういうゲームとのかかわり方を近寄りがたいというイメージで見ている人が多くなってきているんです。だから、そういう人たちももう一度ゲームのおもしろさを味わってほしい。じゃあ、Wiiではがっちり両手で遊びたいっていう人たちを拒絶するのかというと、Wiiでゲームが広がっていけば、自然に両手でどっぷりゲームに取り組みたいと思う人がどんどん増えていくと思うんですね。ようするに、そういう人が増えてきたときには、両手を自由に動かす新しいスタイルの複雑さが広がっていきます。
─ 実際、複雑な操作のゲームも楽しめそうですしね。
宮本 その1つの例として、最初からいきなりヌンチャクなんかつくってるわけですから(笑)。それがある程度、進んで進化したときに、また原点に戻さないと複雑になっていくだけということになるんでしょうね。それはつまり、10年前にN64でゲームが3次元になったことで1回変わって、今度はWiiでインターフェイスから全体を見直すことで1回変わる。でも、10年後くらいにまた何か変わらないとWiiのままではいけへんっていうことを繰り返すんでしょうね。
─ つまり10年周期説ということですね。
宮本 「機能をどんどん強化していくことだけで未来が明るい」というふうに、単純にはいかないんですよね。
|
|

─ ヌンチャクという発想はどういったところから生まれたのですか?
宮本 岩田のほうから、「両手を使ってラクに伸び伸びとゲームをしたい」っていうフリースタイルの提案があったんですね。これまでも、コントローラが2つに外れるものとか、ナムコさんのネジコンとか、いろいろとフリースタイルなコントローラが発売されてますよね。僕自身も、こういう要素はもっとあってもいいって思ってたんだけど、明確な答えが無かったんです。一方でシンプルな外観と機能を目指してデザインしていたWiiリモコンのデザインができたとき、これならリモコンに、もう1つプレイヤーが操作できるものを付けられるなって思ったんです。つまり、これまではコントローラを2つに分けようとばかり考えていたんですけど、そうではなくて、核になるWiiリモコンのモーションセンサーができた時点で、リモコン自体に欠けているものを拡張して付ければ、コントローラを2つに分けるよりも、ずっとすごいことができるかもって思ったんです。その瞬間、一気に答えが見えたわけです。
─ これまでは両手でがっしりコントローラをつかんで遊んできたユーザーも、フリースタイル初体験になるわけですよね。そういったことは経験したことがないだけに、不安に感じる人も少なくないと思うんですが。
宮本 今のユーザーが友達にゲームを勧めたときに「難しいんでしょ」って遊んでくれなかったとか。ちょっと触らせてみたら、混乱して上手に動かせなかった。それを見ていて「違う、違う、こうやるんだよ!!」って言ってたときの相手の気持と同じ気持にあなたが戻るだけなんで、何も怖がることはないんだよと(笑)。だって、ゲームを誰かに勧めているとき、怖がらなくても大丈夫だよって思ってるでしょ?(笑) それはもう僕自身が何回も経験していることなんで(笑)。
─ なるほど(笑)。
宮本 最近、再チャレンジしていることがあって、ヌンチャクを左右逆に持って遊んでるんですよ。
─ 左手でリモコンを持って…?
宮本 そう。左手でリモコン、右手にヌンチャクを持つんです。大分できるようになってきましたね。
─ 左利きの宮本さんでも難しいんですか?
宮本 (イタズラっぽい表情をして)…ものすごく難しいです。
─ そうなんですか。左利きの人って、実はそっちの方が遊びやすいんじゃないかと思ってました。
宮本 そう思うでしょ? でも、(ファミコンのコントローラを持つ構えをして)30年間このスタイルで遊んでいると、逆っていうのはなかなかできないんですよ。
─ 手が馴染んじゃってるんですね。Wiiって右利きと左利きは自由に選べるんですか?
宮本 僕らのように、「逆で遊ぶんだ〜」みたいなハードルを乗り越えようとしないかぎり、これまでゲームで遊んできた人たちは、みんな今までのスタイル、ようは右手でリモコンを持って遊ぶと思いますね。というよりも、そもそもゲームに限らず右利きでも左利きでも、実はどっちでもよかったんですよね。僕らは左利きやのに、右利きの人と同じように左手で十字ボタンを触らされて、「これは右利きの人たちの横暴だ」とかおもしろがって言ってますけど(笑)。そんなのも別に右も左もなくて、たまたま最初に十字ボタンが左に付いていたから、左にあるほうがよかったっていうだけのことなんですよ。それは、字は右手で書くようにできているから、左手で書くと変だと言われたり、みんながおはしを右手で使っているから、左手を使うのがおかしいって言われたりするだけで。でも、これまでのコントローラって逆には持てなかったけど、今度は持てるんで自由に使ってみてください(笑)。
─ 左右どちらの手でも握れるよう、ヌンチャクも左右対称になってるんですね。
宮本 そうです。まったく同じです。だから、これから産まれるお子さんで初めてゲームを触るとき、Wiiリモコンを触ったのが左手だったら、ヌンチャクは右手で使うようになるんじゃないですかね。
─ それはおもしろいですね〜。でも、ゲームに慣れた人にとっては右手で十字ボタンを操作するのは、やっぱり気持悪いでしょうね。
宮本 気持悪いですね。逆の手じゃギターも弾けないですよね(笑)。
─ 一同 (笑)
|
↑核になるWiiリモコンは右手で持つのが一般的
|